2004年03月04日 (木曜日)

青色発光ダイオード裁判問題再び

日経BizTechで、再び青色発光ダイオード(青色LED)裁判問題が取り上げられた。

以前のエントリで言いたいことは書いたつもりだったが、もう一度ひとつのオピニオンとして書く。言いたいことは3つある。

(1) 人物と問題を切り離して議論しよう。
(2) 前提を把握して議論しよう。
(3) リスクとリターンの問題を理解しよう。

さて、BizTechの記事だが2本同時に掲載された。「本当の中村修二・『初対面で彼に言ったこと』」(連載) と「 『真実はこうなんだ!』、中村裁判を熱く語る人物」だ。2本とも中村氏の人物像にスポットを当てている。

基本的には中村氏擁護のスタンスだ。この記事だけでなく、いくつものBlog記事、飲み屋での議論:)で見られるように、この問題は人物像や感情論が混じって扱われることが多いようだ。そう、日本人の苦手とする「問題と人物・感情を切り離す」ということができずに語られていることが多い。強欲呼ばわりされたり、スター扱いされたり、中村氏も大変だろう。人物は人物、問題は問題だ。「中村氏は実はいい人だ」だから「200億円は妥当だ」ということにはならない。問題を整理するために人物像は切り離して考えるべきだ。

そして、巷の議論でも、間違った前提(思い込み?)で短絡的に話されていることが多い。

まず、上記のBizTechの記事でも「中村氏が青色発光ダイオードを発明した経緯」というくだりがあるが、事実は、中村氏は青色発光ダイオードを発明していない。中村氏が発明したのは、青色発光ダイオードを高輝度化する方法である。また、青色発光ダイオード普及のきっかけは、青色発光ダイオードを擬似白色発光させる発明(中村氏によるものではない)によって携帯電話のバックライトに採用され爆発的に売れたことである。つまり、中村氏が発明した技術は欠くべからず技術ではあるが、それ以前に存在した窒化ガリウムを用いて青色発光させるという技術(名古屋大学工学部の赤崎勇教授(当時)らによる)や、それ以降の擬似白色発光させる技術(YAG蛍光体を青色発光ダイオードに塗布)の発明なくしては、現在のような高収益ビジネスには成り得なかったということだ。このことを知れば、将来利益も含めてその50%を相当の対価とすることが疑問とならないだろうか?

それから、リスクとリターンの問題。

例えば、私が素晴らしいアイディアを持って起業を決意したとしよう。手持ち資金は1,000万円。しかし事業化には数億円の研究機材が必要でVCから4億円の出資を仰いだ。それでも先行評価をしてもらい、20%のシェアを確保できた。まだ製品化のメドも立っていないわけだから、かなりの厚遇だ。私は研究機材を購入し、たった1人で寝食を忘れて研究に打ち込んだ。しかし、なかなか結果は出ない。VCには、会うたびに「もうその研究はやめて日銭が稼げる研究をしろ」と言われた。しかし私はVCの厳しい糾弾に耐えて研究を続けた。売上はずっと0だったが、先の増資のおかげで給与をもらい続けることはできた。そして、ついに実用化につながる発明をし、特許を取得した。そして、従業員を雇い、生産設備を整え、販売ルートを開拓した。5年後、私の会社は大きな利益を出す会社に成長した。

この事業を支える特許は100%私の考案であり発明だ。VCの反対にも耐え私一人独力で発明したものだ。さて、ここで問題。会社の出した利益の100%が社長の私のものと言えるだろううか?

そんなことを言ったら「アホか!?」の世界だ。たとえその発見をしたのは私1人でも、ここまで来ることができたのはVCの出資があったからだ。彼らは、ドブに捨てることになるかもしれないお金を投じて大きなリスクを取ったのだ。たとえ途中で反対意見を出したとしてもその価値は変わらない。そして利益と会社の所有はそのシェアに準じてなされる。これが株式会社の原則。つまり、この場合は私の分は20%。(20%持てていること自体厚遇だ)

ここから先は、以前のエントリとかぶるので、ここで筆を置くことにする。

Posted by Pina Hirano at 2004年03月04日 04:26 | トラックバック はてなブックマーク - 青色発光ダイオード裁判問題再び このエントリーを含むはてなブックマーク
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