2005年01月08日 (土曜日)

サービスだけで「IT立国」は実現できない

日経コンピュータ(2004/12/13号)に寄稿した記事である。日経BP社の許可を得て全文掲載する。編集の過程でトゲが無くなっている部分もあるが、必要があれば別エントリで補足することとして、そのまま掲載する。

 政府は資源を持たない日本の21世紀の立脚点として「IT立国」を掲げ、ソフトウエア産業の競争力強化を目指した政策を矢継ぎ早に打ち出している。しかし、ソフトウエア・ベンチャーの経営者である筆者からは、その内容・方向性に疑問符を付けざるを得ない点もある。

 ITインフラの整備、例えばインターネットの普及促進や電子政府の推進などは、それで意味がある。しかし、国内のIT利用を進めるだけでは、「立国」とは言いがたい。IT分野で世界的に認められる価値を日本から生み出せるよう、政府は舵をとるべきではないか。

 経済産業省は最近さまざまな場面で、国内ITベンダーにサービス・ビジネスへのシフトを促している。「今後、OSS(オープンソース・ソフト)の普及に伴ってITベンダーはサービスだけで利益を上げざるを得なくなる」、「日本は、ソフトウエア・プロダクトは弱いが、顧客のニーズを理解しソリューションとして提供するような、きめ細かなサービスは強い」というのが、その理由である。

 筆者はこのような施策をとる経済産業省の担当者に、「ソフトウエア・プロダクトは育成しないのか?」と質問をしたことがある。だが、そのときは「政府系機関を通じて10年以上、ソフトウエア・プロダクトの育成を図ったが、花開かなかった、別の切り口で勝負しなければならない」との答えしか返ってこなかった。

 確かに、勝負するフィールドを変えるのは、負け組にとって有効な戦術の一つだし、フリーソフトの利用が増えれば、欧米への“ソフトウエア税”の支払いを減らせるだろう。

 しかし、ソフトウエア産業をサービス分野にシフトさせる政策は、国内ソフトウエア・サービス産業の保護や雇用維持にこそなれ、日本製ソフトウエアの価値を海外に提供したり、国際的競争力を強化するものではない。

 ソフトウエアの価値の本質は、まさにその知的財産にある。そこで、日本の「ものづくり」の特徴である品質やきめ細かさを国際的に生かすには、その能力を国内の個別顧客に付加サービスとして提供するのではなく、ソフトウエア・プロダクトとして国際的に幅広く提供(ライセンス)すべき、と筆者は考える。

 ソフトウエアがハードウエアから独立し、単独でのビジネスが始まってからまだ20余年しかたっていない。自動車も電子機器も、もっぱら輸入の時代から現在の世界的なポジションを築くのに、はるかに長い時間を要した。例えば、自動車の初輸入(1898年)からトヨタ自動車の対米初輸出(1957年)まで60年かかった。

 あきらめるには早すぎる。日本のソフトウエアはまだ負けたわけではない。今後ソフトウエアそのものから利益を上げることができなくなるというのは、ソフトウエアの知的財産の否定に近い。政府にはまず、この前提を見直していただきたい。そして、「IT立国」の実現のために、10年先、20年先を見すえて、日本が将来的にソフトウエア・プロダクトの世界的な価値創造国(輸出国)になるための施策を進めてほしい。

Posted by Pina Hirano at 2005年01月08日 12:33 | トラックバック
Comments

日本のオープンソースソフトウエアの普及は、これからかもしれませんが、レベルはかなり高いものもあります。
ソフトイーサーしかりXOOPS Cubeしかり・・・。
世界へ輸出できるようなソフトウエア開発は、技術者の英語がネックかなと個人的には感じます。(^O^)

Posted by: たきぽん at 2005年10月25日 22:43
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